コンテンツへスキップ

製作技法【瀬戸黒】

一窯からひとつ

瀬戸黒はその吸い込まれるような黒が特徴です。

この美しい黒を表現するには、鬼板(鉄分を含んだ土)に灰を混ぜた釉薬をかけ、高温で焼いている状態で窯の外に取り出し、急冷させる技法を用います。

これは別名「引き出し黒」と言われます。

500年以上前に茶の世界でわずか30年間しか作陶されなかった幻の器“ 瀬戸黒”は、茶道の世界で侘び・寂びの日本独自の美意識の中で独自の価値観を持つ和の器と言われています。

1,100度以上の窯から引き出し、急冷することにより、美しい音(貫入の音)を奏でながら漆黒へと変化します。

瀬戸黒は一度の窯焼きで多くて3つまでしか焼けません。

納得のいく黒を出すのは非常に難しく、「一窯から一つ」納得のいく作品ができれば良し、としています。

瀬戸黒と志野の原料となる
百草(もぐさ)土は、
希少土として手に入れづらく、
やがて幻の器となる運命

美濃地方で採れる土は、世界でも稀な土(粘土)と言われています。
土は、何万年にも渡り、火山活動や雨によりその性質を変化させます。山に囲まれた自然の地形がこの地域特有の特殊な土を作り出しました。この地域に堆積した土、俗にいう百草(もぐさ)土は、少量の鉄分を含み、急冷に耐えることができる。これが瀬 戸 黒の吸い込まれるような漆 黒を生み、志野の象徴である美しい火色を浮かび上がらせます。百草土は、粗く、細かい空気を多く含んでおり、焼き上がり後も、手に馴染む温かさと柔らかさを感じられます。

100日間の作陶工程

器が完成するまでの約100日間の作陶工程は、さまざまな一期一会が重なり合うことで唯一無二が誕生する。

Day 3
採土
3日間

百草土は希少性が高く、美濃地方の中でも採れる山は限られています。1箇所から採れる量も50㎤ほどしかないと言われ、良質な百草土は今ではほとんど採れなくなっているのが実情です。

Day 10
描く
7日間

日本の美しい四季や自然の変化を感じ取り、自身の中で消化し、スケッチを行いながら形に落とし込みます。描くという行為は、心をアウトプットする作業に近いです。形や色合いを7日間ほどかけて入念に考えます。

Day 70
寝かす
60日間

網で不純物や小石を取り除き、土から脱鉄作業を行います。
その後、次の工程の為、土の粘りの調整を行い、2~3か月は寝かします。
この作業をどれだけ丁寧に行うかが、完成後に大きく影響します。

Day 73
練る・挽く
3日間

練るとういう工程には、土の硬さを均一にする粗練りと、空気を抜く作業の菊練りがあります。練る作業には乾燥を防ぐため、手早く行う熟練の作業が必要です。作陶する工程(手びねり、ろくろ、タタラ)に合わせ、硬さを調整することで様々な美しさを表現することが可能になります。

ろくろを「回す」のではなく、ろくろを「挽く」には、刃物などで物を切ったり削ったりするという意味がありますが、尊では引くという意味も込めています。無駄を省き、最後に残る引き算の美を感じてください。一部の作品を除いて、尊では500年前に実際に使われていた手まわしろくろを再現し、使っています。

Day 80
削る
7日間

数日乾燥後、削り、形を作り込みます。釉薬で隠れてしまう部分ではありますが、骨格は隠せず、最後の焼き上がりに大きく影響します。自作である赤松の木べらを使用。削る箇所に応じて10種類以上の木べらを使い分け、理想とする形に細部までこだわり、時間をかけて作り込んでいきます。

Day 87
乾燥
7日間

乾燥機などを一切使用せず、自然の風を利用し乾燥させます。ゆっくりと水分が抜けるのを待って乾燥させる作業は、 500年前と同じ製法にこだわる、尊のものづくりのスピリットです。高台にある工房には、四季に関わらず風の声が聞こえます。 大地に吹く風の声も作品の一部だと教えてくれました。

Day 90
素焼き
3日間

小さな窯で土に残る水分を飛ばします。 他の土と異なり、特に百草土では冷め割れが生じやすく、窯焼きの温度を低く設定し、割れを起きにくくします。素焼きの温度が高く、土が締まり過ぎても釉薬の乗りが悪くなり、逆に温度が低過ぎても釉薬をかけた時に土が溶けてしまい、形が崩れてしまいます。

Day 93
釉薬
3日間

[志野]何種類もの長石をブレンドした釉薬を使い、白雪のような白を表現します。この白は長石の調合でわずかに変化するため、何度も試行錯誤を繰り返すことで最上の志野が生まれます。
[瀬戸黒]木灰の種類により微妙に黒の色合いが変化するため、色々な調合を試し、理想とする黒を目指します。

Day 100
本焼き
7日間

五感を研ぎ澄ましながら窯の音に耳を傾けます。季節や気候により仕上がりが大きく変わる繊細さを持っている為、窯焼き中は火と向き合いながら5日間以上温度調整を行います。窯焼きの時は、土と会話ができない唯一の時間ですが、火と会話する楽しい時間でもあります。窯の扉を開けるまで色合いや仕上がり具合が確認できず、理想とするものができるのは、1割ほどです。

prev
next

瀬戸黒茶盌

瀬戸黒茶盌

瀬戸黒はその吸い込まれるような黒が特徴です。
この美しい黒を表現するには、鬼板(鉄分を含んだ土)に灰を混ぜた釉薬をかけ、高温で焼いている状態で窯の外に取り出し、 急冷させる技法を用います。
これは別名「引き出し黒」と言われます。
500年以上前に茶の世界でわずか30年間しか作陶されなかった幻の器“瀬戸黒” は、 茶道の世界で侘び・寂びの日本独自の美意識の中で独自の価値観を持つ和の器と言われています。1,100度以上の窯から引き出し、 急冷することにより、美しい音(貫入の音)を奏でながら漆黒へと変化します。
瀬戸黒は一度の窯焼きで多くて3つまでしか焼けません。
納得のいく黒を出すのは非常に難しく、「一窯から一つ」 納得のいく作品ができれば良し、としています。

作品を見る

瀬戸黒皿

瀬戸黒皿

500年前、黒は高貴な色とされていました。

瀬戸黒は吸い込まれるような黒をしており、皿の上で、料理を引き立たせます。

特別な色鮮やかなメイン料理にいかがでしょうか。

良い料理、良いお酒、そして良い器で、特別な時間をお過ごしください。

また、観賞用でも、1つ飾るだけで存在感があり、部屋に静寂と重々しさを与えます。

作品を見る

瀬戸黒酒呑

瀬戸黒酒呑

一人の夜、晩酌をするには瀬戸黒酒呑。

瀬戸黒は吸い込まれるような深い黒をしています。

夜の静寂な中、物思いに耽り、瀬戸黒酒呑で一杯いかがでしょうか。

500年前の時代、部屋の中は灯りをつけても薄暗いのが当たり前でした。

今は部屋の電気を付ければまるで昼のような明るさになりますが、部屋にいながら、器を見ることで電気がなかった時代の深い夜を感じ、考え事をするにはとても良い時間になります。

情報が溢れている今の時代、TVもスマートフォンもつけず、器だけを見て物思いに耽ってみてはいかがでしょうか。

作品を見る

器を長く使う・お手入れ方法

STEP1
洗う

洗剤は使わず、水でお洗いください。柔らかいスポンジで擦ります。

STEP2
拭く

柔らかい布や、キッチンペーパーで水を拭き取ります。

STEP3 (抹茶茶碗)
乾燥

天日干しで2時間、天気の悪い日や室内干しの場合は12時間は干してください。
抹茶茶碗の底面(高台)は希少土を直接肌で感じられる部分ですが、水を吸収してしまいます。
カビ防止のため、STEP3の乾燥まで行ってください。

器のお手入れ方法を詳しく見る