コンテンツへスキップ

製作技法【志野】

変わる瞬間

志野は、500年以上前に茶の世界でわずかな間しか作陶されなかった幻の器です。

16世紀末から17世紀初頭にかけて、わずか20年~30年の間しか焼かれませんでしたが(大窯、穴窯で焼かれていました)、日本美術の転換期に開花し、当時の人々の美意識に変革をもたらしました。


志野は長石を使用することで現れる白雪のような白の中に、ほんのりと温かみを感じられる火色が見える特徴が魅力です。

その美しい色を引き出すのは非常に難しく、強還元焼成により窯内の温度が中々上がらない状況下である為、昼夜を問わず、窯の温度調整が必要となります。 約7日間以上にも及ぶ長時間の窯焼きであり、非常に過酷な状況下で神経をすり減らしながら行います。

季節や気候によっても仕上がりが大きく変わり、一瞬足りとも気を抜けない繊細さを持っております。


志野の色は「雪解けで見える土」のような、「雲と夕陽から成る美しい夕焼け」のような、印象を残します。

一切の思惑や意図が介在していない自然の刹那の美しさを切り取り、表現している志野は、今も昔も人々の心を魅了しています。

瀬戸黒と志野の原料となる
百草(もぐさ)土は、
希少土として手に入れづらく、
やがて幻の器となる運命

美濃地方で採れる土は、世界でも稀な土(粘土)と言われています。
土は、何万年にも渡り、火山活動や雨によりその性質を変化させます。山に囲まれた自然の地形がこの地域特有の特殊な土を作り出しました。この地域に堆積した土、俗にいう百草(もぐさ)土は、少量の鉄分を含み、急冷に耐えることができる。これが瀬 戸 黒の吸い込まれるような漆 黒を生み、志野の象徴である美しい火色を浮かび上がらせます。百草土は、粗く、細かい空気を多く含んでおり、焼き上がり後も、手に馴染む温かさと柔らかさを感じられます。

100日間の作陶工程

器が完成するまでの約100日間の作陶工程は、さまざまな一期一会が重なり合うことで唯一無二が誕生する。

Day 3
採土
3日間

百草土は希少性が高く、美濃地方の中でも採れる山は限られています。1箇所から採れる量も50㎤ほどしかないと言われ、良質な百草土は今ではほとんど採れなくなっているのが実情です。

Day 10
描く
7日間

日本の美しい四季や自然の変化を感じ取り、自身の中で消化し、スケッチを行いながら形に落とし込みます。描くという行為は、心をアウトプットする作業に近いです。形や色合いを7日間ほどかけて入念に考えます。

Day 70
寝かす
60日間

網で不純物や小石を取り除き、土から脱鉄作業を行います。その後、次の工程の為、土の粘りの調整を行い、2~3か月は寝かします。この作業をどれだけ丁寧に行うかが、完成後に大きく影響します。

Day 73
練る・挽く
3日間

練るとういう工程には、土の硬さを均一にする粗練りと、空気を抜く作業の菊練りがあります。練る作業には乾燥を防ぐため、手早く行う熟練の作業が必要です。作陶する工程(手びねり、ろくろ、タタラ)に合わせ、硬さを調整することで様々な美しさを表現することが可能になります。

ろくろを「回す」のではなく、ろくろを「挽く」には、刃物などで物を切ったり削ったりするという意味がありますが、尊では引くという意味も込めています。無駄を省き、最後に残る引き算の美を感じてください。一部の作品を除いて、尊では500年前に実際に使われていた手まわしろくろを再現し、使っています。

Day 80
削る
7日間

数日乾燥後、削り、形を作り込みます。釉薬で隠れてしまう部分ではありますが、骨格は隠せず、最後の焼き上がりに大きく影響します。自作である赤松の木べらを使用。削る箇所に応じて10種類以上の木べらを使い分け、理想とする形に細部までこだわり、時間をかけて作り込んでいきます。

Day 87
乾燥
7日間

乾燥機などを一切使用せず、自然の風を利用し乾燥させます。ゆっくりと水分が抜けるのを待って乾燥させる作業は、 500年前と同じ製法にこだわる、尊のものづくりのスピリットです。高台にある工房には、四季に関わらず風の声が聞こえます。 大地に吹く風の声も作品の一部だと教えてくれました。

Day 90
素焼き
3日間

小さな窯で土に残る水分を飛ばします。 他の土と異なり、特に百草土では冷め割れが生じやすく、窯焼きの温度を低く設定し、割れを起きにくくします。素焼きの温度が高く、土が締まり過ぎても釉薬の乗りが悪くなり、逆に温度が低過ぎても釉薬をかけた時に土が溶けてしまい、形が崩れてしまいます。

Day 93
釉薬
3日間

[志野]何種類もの長石をブレンドした釉薬を使い、白雪のような白を表現します。この白は長石の調合でわずかに変化するため、何度も試行錯誤を繰り返すことで最上の志野が生まれます。
[瀬戸黒]木灰の種類により微妙に黒の色合いが変化するため、色々な調合を試し、理想とする黒を目指します。

Day 100
本焼き
7日間

五感を研ぎ澄ましながら窯の音に耳を傾けます。季節や気候により仕上がりが大きく変わる繊細さを持っている為、窯焼き中は火と向き合いながら5日間以上温度調整を行います。窯焼きの時は、土と会話ができない唯一の時間ですが、火と会話する楽しい時間でもあります。窯の扉を開けるまで色合いや仕上がり具合が確認できず、理想とするものができるのは、1割ほどです。

prev
next

志野 抹茶茶盌

志野 抹茶茶盌

志野の魅力は、長石を使用することで現れる白雪のような白の中に、火色が見え、ほんのりと温かみを感じられるところにあります。「雪解けで土や新芽が見える」ような、「雲の隙間から美しい夕日が見える」ような、なんとも言い難い印象を残します。その美しい色を引き出すのは非常に難しく、強還元焼成により窯内の温度が中々上がらない状況下で、昼夜を問わず、約7日間以上にも及ぶ長時間の温度調整を必要とします。季節や気候によっても焼け具合は大きく変わるような、一瞬足りとも気を抜けない繊細さを持っております。

作品を見る

志野 酒呑

志野 酒呑

志野焼で呑む日本酒は格別。グラスと比べ、徳利やぐい呑みは土から成り、粒子が荒く、器が息をしていると言われています。これが日本酒の香りを引き立て、味わいをまろやかに
することから、「志野焼で呑む日本酒は格別」と言われるようになりました。同じ時代、同じ土地に生まれた日本酒と志野焼き。500年の時代を感じながらご賞味ください。

作品を見る

志野 皿

志野 皿

尊は、日本の四季や自然を表現した作品です。料理を食べ進めると、器の表情が現れます。瀬戸黒・志野皿は、料理を引き立たせるだけではなく、料理の後に日本の美しい自然を感じさせます。

作品を見る

志野 花器

志野 花器

志野の花器には野花や枝物が合います。花を生けなくても、季節の移り変わりや自然を感じられる花器のデザインなので、そのまま飾って頂い
ても十分に楽しめます。

作品を見る

志野 壺

志野 壺

山に雨が降り、川となり、海へと流れる。自然の営みの繰り返しは、はるか古(いにしえ)から今なお続いている。志野壺では、そういった日本の自然の移り変わりを 心象風景として捉え、表現しています。家の中で、格式の高い棚に置くことで周りの雰囲気が一変します。

作品を見る

志野 湯呑

志野 湯呑

志野湯呑は土から成り、粒子が荒く、器が息をしていると言われています。

また、他の陶器にはない、膨らみ、柔らかみのある乳白色は、手に馴染み、温かみを感じられます。

志野湯呑みは、毎日のように使うことで、うつわが育っていき、深い味わいになっていきます。

経年変化した志野湯呑は、うつわの景色が変わり、非常に味わい深く、愛着が湧きます。

毎日使う器だからこそ、良いものを、そして世界に一つしかない自分だけの器として育っていく感覚をお楽しみください。

作品を見る

器を長く使う・お手入れ方法

STEP1
洗う

洗剤は使わず、水でお洗いください。柔らかいスポンジで擦ります。

STEP2
拭く

柔らかい布や、キッチンペーパーで水を拭き取ります。

STEP3 (抹茶茶碗)
乾燥

天日干しで2時間、天気の悪い日や室内干しの場合は12時間は干してください。
抹茶茶碗の底面(高台)は希少土を直接肌で感じられる部分ですが、水を吸収してしまいます。
カビ防止のため、STEP3の乾燥まで行ってください。

器のお手入れ方法を詳しく見る